50歳からの仕事と人生

50代から始める介護・仕事・健康について

高齢者介護施設にハロウィンは要らない・秋は一年で一番美しい季節

介護施設で働いているびょうです。

 

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台風一過。

昨日の台風は横殴りに雨が降り、吹雪のような風景が見られました。

物凄い暴風雨なのですが、ちょうど家のマンションは側面から吹かれる位置にあり、風も雨も直接の被害はありませんでした。

台風が過ぎると、驚くほど冷たい風が吹き始めました。

 

 

 

そんな中。

うちの施設では10月に変わるのを待ちきれず、施設内に季節のデコレーションが施されました。

おばけ・かぼちゃ・魔女・こうもり。

ハロウィンの季節です。

って、ハロウィンは季節の風物詩になってしまったようです。

 

 

 

ハロウィンはどこ由来

 

先日ちょっと落ち込んでいたので、気晴らしに久しぶりにドラマ「梨泰院クラス」を見たのですが、作中で「ハロウィンはアメリカのお祭りよ!」って言っていて、「ちょっと待て」と違和感を覚えました。

ハロウィンはケルトのお祭りです、確か。つい「確か」と入れてしまうほどに、その起源はよくわかりません。ネットをちらりと覗くと、ケルトの暦では10月末が年末であり、それに合わせて悪霊を追い払うお祭りなんだそうです。

 

ハロウィンは業界の販促ツールでしかない

 

ハロウィンに限らず、クリスマスやバレンタインデーというのは、低迷する日本経済を支えるために欠かせない販売促進アイテムであるのは理解できます。今の時期は何でもハロウィン仕様になっています。子供の居るご家族には楽しい季節だろうと思います。

しかし。

高齢者介護にハロウィンは必要でしょうか。

 

介護職と装飾

ちょっと逸れるのですが、介護職と装飾にはいろんな関わり方があります。

私の職場は住宅型老人ホームで、以前の職場なら、装飾作りをする暇もないし、そういう作業はデイサービスでやるので、ホーム勤務の方はやらないでください、というスタンスでした。夜勤バイトに行っていたサービス付き高齢者施設では、折り紙作品などを壁に貼るのはチープであり、高齢者に失礼だからと貼り出しを禁止していました。職員が作るものなら良いけれど、入居者が作ったものを展示すると、全員分は展示できないことから、不公平になる、などという理由もありました。

 

ハロウィンは寄り添いなのか

 

そういうローカルルールはいろいろありますが、デイサービスでは高齢者に寄り添う為にと職員が業務時間外にデコレーションを準備したり、利用者さんのレクレーションにと塗り絵や貼り絵を準備したりすることが多いのです。そして10月のテーマは、多くの施設でハロウィンなのです。ハロウィンをテーマにすることが高齢者に寄り添うことになるのでしょうか。

 

ハロウィンをわからない高齢者も多い

 

実はうちの母のデイサービスでも貼り絵でカレンダーを作っていますが、やはり毎年10月はハロウィンです。出されたものを貼るだけなので楽しく工作して持ち帰る母ですが、

「これなん?」と聞いても「知らん」と言います。出されたから作った、そういうもののようです。これって誰得なんでしょう。若い職員は喜々として作っていますが、ハロウィンなんて定着したのはここ数年です。こうした作業は手先を使うことでリハビリになるのもありますが、季節の風物詩をテーマにするのは、認知症の方への良いアプローチになるはずが、縁もゆかりもないお祭りがテーマとなると懐かしさや季節への期待感を演出するものではありません。それこそ、職員の自己満足でしかないのです。

ハロウィンを見て、「わしもなあ、ハロウィンでみよちゃんとトリックオアトリートと菓子を貰って回ったのじゃよ」となるにはまだまだ長い時間がかかります。私が高齢者になっても、そんな思い出はありません。

 

日本の10月は一年で一番美しい季節

 

私は写真が趣味なのですが、秋は特に撮影ドライブなどが忙しいのです。自営時代は秋休みと宣言して、各地に秋の訪れを撮りに出かけました。そう、秋は一年で一番美しい季節なのです。入道雲からいわし雲に変わり、空が高く、乾燥した冷たい風を感じるとワクワクするものです。

 

季節や農作物と記憶の関係性は深い

 

また、秋は収穫の時期。稲刈りを終えて豊作を祝い、お祭りをして喜び感謝を捧げる時期。私が担当した施設の入居者さんは重度の認知症でしたが、トイレ介助をした時に、トイレに貼ってあるカレンダーを見ては、ああ田植えをせんばいかん、稲は育っただろうか、そろそろ刈り取らんばいかん、などと今は無き実家の田畑を思い出していました。

菜園をやっていたという方も多いので季節や旬の野菜や収穫の話は高齢者に取って私達が思う以上に大切だと感じます。

 

10月には楽しい風物詩が沢山ある

 

10月の風物詩と言えば、気候の関係で春に行われるところが多くなったとは言え、やはり、体育の日=運動会です。衣替え、栗拾い、ぶどう狩り。他にも芋掘りもありますし、稲刈りもありますから、田んぼには案山子も立っています。

案山子、と言えばこの歌を思い浮かべてちょっとうるっとしてしまいます。

 

 

10月には多くの神事がある

 

また、10月は神無月と言われます。

神様が神事の為に出雲大社に行ってしまうので、出雲以外の土地には神様が居なくなってしまうというユニークな発想、それが伝統的な月の呼び名になっているのを考えると、日本って素晴らしいなと感じます。

神様が居なくなるほど忙しいのですから様々な神事もあります。10月17日に伊勢神宮で執り行われる神嘗祭は日本の収穫の神事でありますから、ハロウィンよりもこちらが良いかなと思います。神嘗祭新嘗祭、私達には馴染みが薄くなってしまいましたが、高齢の方に聞くと、いろいろ教えて下さいます。

 

 

 

季節で思い起こされる高齢者の記憶に寄り添う

 

季節のイベントではありませんが、涼しくなってきましたね、みたいな話をすると、

弟を連れてトンボを獲りに行った、火をおこす炭が買えなかったから炭屋の押し車の後をつけて落ちた炭を集めた、おにぎりを持って稲刈りの手伝いに行った、庭で焚き火をして焼き芋を作った、など、いろんな思い出が引き出されてます。そうした秋の思い出に繋がる時期を、けばけばしい紫とオレンジのハロウィンで塗りつぶすのは、あまりに勿体ないと思います。

 

10月のコスモスも大切

私の父は10月に生まれ、10月に没しました。亡くなる前の数年、両親を車に乗せていろんな所にドライブしましたが、その中で、広大なコスモス畑に両親に立ってもらい撮った写真はとても良いものになりました。滅多に笑わなかった父が、母と一緒に照れて笑った一瞬をカメラで捉えることができ、その写真は遺影になりました。葬儀屋の方が、普通ならバックは花の写真を合成することもあるけれど、綺麗なコスモスに囲まれていますので、そのまま遺影にしますね、ということで、今でも父はあの時のコスモスに囲まれて微笑んでいます。

コスモスも見頃は10月。

 

 

忘れられがちなハロウィンと日本人の悲劇的な事件

 

10月、ハロウィンと言うと、あの事件を思い出します。

日本人留学生射殺事件。プリーズとフリーズを間違えた、というのが嘘か本当かわかりませんが、あの悲劇が起きたのは10月のハロウィンパーティ。29年前の出来事で、亡くなった方は生きていたら45歳。随分長い時間が経ってしまいました。

 

最後に

ハロウィンは若い方には楽しいお祭なのかもしれませんが、高齢者には縁もゆかりもないことです。むしろ気持ち悪いというか、蜘蛛やおばけを楽しむ気には、私もなれません。

今一度、何のため、誰のための活動なのか、考えていただきたいと思います。

 

 

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